用途別に7種類の液肥を使いこなす

甘彩六花シリーズ
用途別に7種類の液肥を使いこなす
執筆 林 大吾

(1)開発の経緯とねらい
 甘彩六花シリーズは用途別の7種類の商品からなる液体肥料である.
 窒素,リン酸,カリウムは植物の栽培に必要不可欠な成分である.しかし,窒素は雨水や潅水により地下水へ流亡しやすく,また,リン酸は土壌に吸収固定されやすい.日本では肥料の施肥量を増加させることにより,農作物の収量を飛躍的に向上させてきたが,過剰な施肥は地下水の汚染や土壌メタボリックなどの環境問題に進展している.
 このように,農作物が必要とする肥料成分は投入された全量が作物に使用されるわけでなく,土壌に残った余剰肥料は環境問題を引き起こしている.
 そこで,リン酸を始めとする有効成分を発酵工程に通すことで極小化し,酵素を付加することで吸収率を飛躍的に高めた甘彩六花シリーズの液体肥料を用途に応じて7種開発した.一般的に流通している肥料の平均値と比べると肥料濃度は10分の1以下ながら逆に数倍の効果を得ることが可能となった.収量や秀品率の向上はもちろん,減肥が可能になるため,連作障害の軽減や過剰施肥による地下水の汚染などの環境問題の軽減にも役立てることができる.

(2)各商品の特徴と効果
1. 甘彩六花(アマイロリッカ)
甘彩六花(生第100558号)は水溶性リン酸1.6%,水溶性カリウム0.3%を含む,生殖生長型の液体肥料である.主原料には過リン酸石灰などを使用している.
化学的な根拠を実証するまでには至っていないが,甘彩六花に含まれる酵素が光合成を促進するとしか考えられない試験データを多数取得しており,このことが作物内の糖を増加させると考えられる.増加した糖と作物内の硝酸態窒素が結合し,アミノ酸を生成するため,作物の生育が促進される.前述の通り,甘彩六花を散布することで作物の糖度が上昇し,残留硝酸態窒素がアミノ酸合成に使用されるため減少する.また,生殖生長型肥料でありながらも,アミノ酸合成が促進されるため,果実を沢山成らせながらも葉や茎の展開を促進することが可能である.甘彩六花の生殖生長因子により細胞分裂を促進するため,細胞の1つ1つの体積を大きくするのではなく,細胞の数を増やして肥大をさせるため,作物色が濃くなり,品質が向上すると同時に食味が向上する.
使用方法は果樹や果菜類では花芽分化期,開花期,着果期,肥大期それぞれに7~10日おきに数回ずつ500倍希釈で葉面散布または灌水を行う.潅水時に希釈倍率を勘案しない場合の目安は1~2㎏/10aである.また,散布頻度を減らす場合では500倍以下の倍率での散布も可能である.
葉物や根菜には萌芽後から収穫1週間までに3~4回,500倍希釈で葉面散布を行う.
甘彩六花原液のpHは3である.農薬との混用は石灰硫黄合剤や機械油乳剤,銅剤など強アルカリ性の農薬以外であれば基本的に混用可能である.
甘彩六花
図1 甘彩六花商品パッケージ
450mlスプレー(ストレートタイプ),200mlボトル,500mlボトル,2㎏ボトル,5㎏箱,10kg箱がある.
2. 甘彩(アマイロ)
甘彩(生第100133号)は窒素1.0%,水溶性リン酸0.5%,水溶性カリウム0.3%を含む栄養成長型の液体肥料である.主原料はアミノ酸副産液である.
過剰に肥料を与えた土壌には硝酸態窒素を始めとする多くの余剰成分が含まれる.甘彩を数回施肥すると,主に硝酸態窒素の目安となるEC値の値が減少すると同時に作物の生育が促進されることが確認されている.
科学的に実証はできていないが,甘彩に含まれる酵素はイオン化し土壌に吸着している余剰肥料を電離し作物へ吸収されやすくしていると考えられる試験結果を多数取得している.作物の養分吸収量が増加することで,作物の肥大を促進することができる.さらに,余剰肥料が土壌から解離し,一部を作物が吸収することで土壌EC値が減少し,pHのバランスが整うことで,連作障害の軽減も期待できる.加えて,甘彩は栄養生長型の肥料であるため,生殖生長に偏りすぎた作物の葉や茎の展開を促し,樹勢の回復や成疲れを軽減させる.
 使用方法は,作物の栄養生長期に1週間以上の間隔で500倍希釈液を数回散布または灌水を行う.潅水時に希釈倍率を勘案しない場合の目安は1~2㎏/10aである.
 甘彩原液のpHは9である.農薬との混用は石灰硫黄合剤や機械油乳剤,銅剤など強アルカリ性の農薬以外であれば基本的に混用可能である.

3. 六花(リッカ)
 六花(生第100134号)は水溶性リン酸3.2%,水溶性カリウム0.6%を含む生殖生長型の液体肥料である.主原料には過リン酸石灰などを使用している.
 六花は,主成分であるリン酸をはじめとする,生殖生長因子のみを配合している.また,前述の通り発酵工程を通しているため,少量の施肥でも確実に花芽分化を促進し花数を増加させることができる.そして,六花の強い生殖生長作用により結実率が向上する.さらに,細胞分裂を促進し,花弁や果皮の細胞が増加することで色を濃く,鮮やかに発色させることができ,果実の細胞数が増加することで味が濃くなり,食味が向上する.
使用方法は,花芽分化期,開花期,作物肥大期それぞれに1週間以上の間隔で500倍希釈液を数回葉面散布する.
六花原液のpHは2である.農薬との混用は石灰硫黄合剤や機械油乳剤,銅剤など強アルカリ性の農薬以外であれば基本的に混用可能である.

健花(スコヤカ)
 健花(生第100732号)は水溶性リン酸2.5%,水溶性カリウム0.2%,カルシウム3.5%を含む,生殖生長型の液体肥料である.主原料には動物性骨粉,塩化カリウムなどを使用している.
 カルシウムは作物の生育に欠かせない養分であるが,分子量が大きく,根から吸収しづらい上,作物体内での移行性も低い.他のシリーズと同様に健花はカルシウムを始めとする肥料成分を発酵工程に通すことで分子量を小さくし,また,酵素を付加することで吸収率を高めているため,よりカルシウムの効果を発揮することができる.
 上述したカルシウムの効果を発揮することで,カルシウムが細胞壁を強化し,菌類の侵入を防ぐため,うどん粉病やべと病などの病気を予防する.また,あらゆるカルシウム欠乏症を防止・改善する.柑橘類では果皮の細胞壁を強化することで浮皮を軽減する他,桜桃のうるみ果やイチゴの軟果予防にも効果がある.さらに,葉物やその他の作物の棚持ちを向上させる.
 健花は六花と同様に生殖生長因子を多く含むため,花芽分化の促進や花数増加の効果があるが,特にカルシウム含有量の少ない土壌でより効果を発現する.北海道においては大豆や小豆などの豆類で莢数や粒数大幅増加の多数の実績がある.また,ジャガイモでは強い生殖生長作用によりストロンの本数が増え,イモ数を増やし収量が増加するという実績が,北海道の各農協を始め,全国で多数確認されている.
 使用方法は,果菜類では育苗期,生育期,収穫前などそれぞれに1週間以上の間隔で500~1000倍希釈液を数回葉面散布する.柑橘類の浮皮予防では,梅雨明けから着色期までに3~4回500倍希釈で葉面散布する.ジャガイモでは萌芽期から落弁期までに3~4回500倍希釈で葉面散布する.豆類では花芽分化期ならびに開花期それぞれに500倍希釈で1~2回葉面散布する.
健花原液のpHは9である.農薬との混用は石灰硫黄合剤や機械油乳剤,銅剤など強アルカリ性の農薬以外であれば基本的に混用可能である.

4. 活根彩果(カッコンサイカ)
 活根彩果(生第100048号)は,窒素3.5%,水溶性リン酸0.4%,水溶性カリウム0.5%,水溶性マンガン0.08%,水溶性ホウ素0.18%を含む,栄養生長型の液体肥料である.主原料には動物性脂肪を使用している.また,三大栄養素である,窒素,リン酸,カリウムに加え,微量要素のホウ素,マンガンを配合した.栄養生長の中でも新根生長促進に特化した資材である.
 育苗時に潅水することで,新根を充実させ,強い苗を育てる.また定植直前に潅水またはドブ漬けを行うことで活着力が高まり,初期成育を確実に早める.さらに,定植後1か月に1度潅水することで,一般的に抗酸化力が強いと言われる新根が継続的に発生し,センチュウや病気に強くなる.
 使用方法は,花卉,果菜,水稲などあらゆる作物の育苗では1週間に1度,500~1000倍希釈液を潅水する.
定植直前には弁当肥料として500~1000倍希釈液を潅水またはドブ漬けを行う.定植直後は活着促進のため,500~1000倍希釈液を7日おきに3度潅水する.果樹や栽培期間中は月に1度,500~1000倍希釈液を潅水する.
希釈倍率を勘案され場合の目安となる量は1~2㎏/10aである.
活根彩果原液のpHは5である.農薬との混用は石灰硫黄合剤や機械油乳剤,銅剤など強アルカリ性の農薬以外であれば基本的に混用可能である.

5. 大地豊彩(ダイチホウサイ)
 大地豊彩(生第102743号)は,窒素0.2%,水溶性カリウム3.0%を含む液体肥料である.主原料は木草灰を使用している.
カリウムは生育初期から生育後期まで必須の養分であるが,その最大の役割は,水分や養分を植物体の隅々まで行き渡らせる,「養分転流力」である.
 大地豊彩を作物へ葉面散布することで,葉で光合成により生成された糖を収穫物となる果実や根部へ滞りなく供給し続けさせることとで,肥大を促進する.また,このように安定して養分を供給することは,肥大を促進するだけでなく,キュウリの曲がり果やひょうたん果などの予防にも効果的である.
 使用方法は,根菜類では肥大期に2~3回,500倍希釈液を葉面散布する.果菜類や果樹では結実から収穫までの期間に1~2週間に1度500倍希釈液を葉面散布する.
大地豊彩原液のpHは10である.農薬との混用は石灰硫黄合剤や機械油乳剤,銅剤など強アルカリ性の農薬以外であれば基本的に混用可能である.

6. 七彩(ナナイロ)
 七彩(生第90146号)は,窒素0.1%,水溶性リン酸1.0%,水溶性カリウム0.1%,カルシウム2.5%を含む液体肥料である.主原料は過リン酸石灰や乳酸カルシウムである.
 七彩は赤色発色に効果の高い,カルシウムとリン酸を他グレードと同様に発酵工程に通すことで分子量を小さくし,吸収率を向上させることでより早く,確実に果実の色づきを向上させる.特に赤色発色を必要とする,柑橘類やリンゴ,柿,ブドウなどで多数の実績がある.また,甘彩六花と同様の作用により,光合成力を高めることで糖の生成が促進され,果実の糖度が上昇する.
 使用方法は,果実肥大期後半から収穫5日前までに2~5回,500倍希釈液を果実や葉面散布する.
七彩原液のpHは5である.農薬との混用は石灰硫黄合剤や機械油乳剤,銅剤など強アルカリ性の農薬以外であれば基本的に混用可能である.

(3)施用の実例
1. 柑橘類への施用実例
①花芽分化期
12月・1月に1回ずつ,六花500倍希釈を葉面散布.
②開花期
六花500倍希釈を2回葉面散布.
③梅雨明け
健花500倍倍希釈を2回葉面散布.
④肥大期
甘彩六花500倍希釈を4回葉面散布.
⑤着色期
甘彩六花・七彩混用500倍希釈を2回葉面散布.
六花と甘彩六花を散布することで,花芽分化を促進するため,裏年を無くし収穫量を増やすことができる.また,カルシウム剤健花の効果で浮皮や裂果を軽減,果皮品質や棚持ちが向上する.さらに,七彩を散布することで着色が早まるため,早出しも可能となる(図2).

図2 極早生(日南1号)による着色初期試験
左:七彩散布区 右:対照区
七彩500倍希釈液2回葉面散布後

2. イチゴへの施用実例
育苗期
2週間に1回,500倍希釈の活根彩果と健花を潅水または葉面散布.
花芽分化期
花芽分化期に2~3回,甘彩六花500倍希釈を葉面散布.
定植時
活根彩果500倍希釈液にドブ漬けまたは定植後7日おきに3回潅水.
収穫期
1~2週間に1回,甘彩六花500倍希釈を葉面散布または灌水.2週間に1回,健花500倍~1000倍希釈を葉面散布または灌水.2月以降に甘彩500倍希釈を潅水.希釈倍率を勘案しない場合,の目安は1~2㎏/10aである.

イチゴへの施肥において,12月までに1番果を収穫し,値段の高い時期に出荷するためには,1番花の花芽分化期に甘彩六花を散布することが重要である.甘彩六花を散布することで,花芽分化を促進するとともに,花の質を向上させる.また,生殖生長型の甘彩六花と栄養生長型の甘彩を併用することで,たくさん実を成らせながらも樹勢を保ち,休みなく収穫し続けることが可能となるため,収穫量が増加する.
2016年8月から2017年4月に栃木県で行った施肥試験では,8月下旬から4月末まで甘彩六花500倍希釈液を10日間隔で葉面散布し続けた結果,厳寒期の収量が重量ベースで19.4%増加した.また,糖度上昇や花数の増加が確認された.
健花は,細胞壁を強化し,うどん粉病やベと病,チップバーンなどを予防する.また,果実を引き締め,軟果を予防し,棚持ちを向上させるため,廃棄量を削減し,トータル出荷量の増加が期待できる.

3. ジャガイモへの施肥実例
①萌芽期から落弁期まで
健花500倍希釈を3~4回,葉面散布する.
②肥大期
健花500倍希釈を数回,葉面散布する.

 健花の生殖生長因子により,ストロンの発生を促し,本数を増やすことで,イモ数が増加する.また,肥大期にも数回散布することで,細胞分裂を促進し,肥大や比重増加に効果的である.また,収量増加以外にも,カルシウムで細胞壁を強化することで,軟腐病を予防する他,棚持ち向上に効果を発揮する.
 2017年にJA道北なよろ様にご協力いただき,収量調査を行った.品種はトヨシロである.500倍希釈液を3回葉面散布した試験区では,10株の合計収穫量は1.39倍に増加した.さらに,90~190g(特M,L)のチップサイズの数量は1.4倍,重量は1.47倍に増加した(図3,4).

図3 JA道北なよろ様収量調査 対照区
上から,3L(260g以上),2L(190~259g),
L(120~189g),特M(90~119g),M(70~89g),S(40~69g),2S(39g以下)

図4 JA道北なよろ様収量調査 試験区
上から,3L(260g以上),2L(190~259g),
L(120~189g),特M(90~119g),M(70~89g),S(40~69g),2S(39g以下)

4. 大豆への施肥実例
①花芽分化から開花期
健花500倍希釈液を1~2回,葉面散布する.
②肥大期
健花500倍希釈を数回,葉面散布する.

 健花の生殖生長因子により,花芽分化を促進し,花数を増加させる結果,莢数を増加させることができる.また,結実率が向上するため,粒数が増加する.さらに,収量増加以外にも,カルシウムで細胞壁を強化することで,うどん粉病やべと病などの病気を予防する他,棚持ち向上に効果を発揮する.
 2016年に千葉県松戸市で行った枝豆(湯上り娘)の収量調査では,莢数が35.8%増加した(図5,6).

図5 千葉県枝豆収量調査 対照区
左から,3粒莢,2粒莢,1粒莢

図6 千葉県枝豆収量調査 試験区
左から,3粒莢,2粒莢,1粒莢