日本の農業への想い

「日本の農業を豊かに、幸せに。今、私に何ができるのか」

日本農業の進歩発展への想いが、私を動かした。

肥料メーカーで販売を担当していたころ、私は次第に危機感を募らせるようになっていました。
その当時私が目にしていた農業業界は、技術面に於いてそれ以前の数十年間と比較しても進歩発展したと感じられることはほとんど有りませんでした。工業や情報産業の分野が技術革新により目覚ましい進歩を遂げるなか、停滞し続ける農業に対し、いてもたってもいられなくなっていたのです。

「高い関税や高い価格で農業を保護する」つもりで始まった戦後の農業保護政策が、いつの間にか日本の農業の競争力を失わせ、進歩発展の為の努力をすることから少しずつ農業を遠ざけてしまったのでしょうか。旧態然とした日本農業の業界構造も少なからず妨げとなっていたのかもしれません。

その結果、「魅力ある産業」とはとても言えなくなってしまった日本の農業。農家の方々は不安定な生活に苦しみ、また、若者の農業離れで加速する農家の高齢化や、収益性の上がらない小規模農家の離農で、農業就業人口はどんどん減少し、今の様な状況が続けば、日本の農業は生き残ることが出来なくなる。日本の農業の未来はどうなってしまうのでしょうか。何とか日本の農業を救いたい、そう思いました。

「何とか農業をもっと魅力ある産業に出来ないだろうか。魅力ある作物、安定した収穫、少しでも多くの収穫量…。私が出来ることで、少しでも農業の進歩発展に貢献し、日本の農業を豊かに、農家の方々を幸せにできる方法を見つけたい」

その答えの一つは、肥料を改良することだと思いました。従来の肥料メーカーが改良の手を入れてこなかった、チッ素・リン酸・カリウムの配合比率を始めとする旧態然の知識に基づいた肥料は、大手肥料メーカーも改善の手を加えずに何十年も同じ製品で、同じ手法が用いられていました。ここに何か進歩発展のチャンスは無いか、今までの肥料の常識を打ち破り、もっと低コストで、もっと作物の品質向上や収穫量向上に役立つ肥料の開発が出来ないか…。従来の肥料開発で滞ってきた改良を打破することが、問題解決の重要な鍵を握ると私は考えました。

「従来の肥料開発の常識を変え、本当に価値ある作物を育てる肥料を開発する。そして少しでも日本の農業の進歩発展に貢献したい」

その想い一つで、私はリン酸を初めとする様々な肥料の研究開発を始めたのです。

「質と量の両立へ」に続く…